シナリオライター 麻枝准氏と久弥直樹氏 |
このお二方の関わったゲームの中で、 私が最初にプレイしたのは「ONE〜輝く季節へ」でした。 その後、「Moon.R」「Kanon」「AIR」とプレイし、 それぞれの感想はそれぞれのページに書きます。 「ONE」をプレイして、私はこのお二方の書かれたものに好感を持ちました。 ゲームという性質上、また18禁という性質上を考えた場合、 残念ながらけして最良とは呼べないストーリーですが、 二人の手によって作られたキャラは非常に生き生きとして魅力的でした。 個性的な言動と趣味を持つキャラも面白かったですが、それ以上に、 キャラクターの人物像がそれまでのギャルゲー・美少女ゲーと比べて リアルだったところが、最大の魅力だったと思っています。 とはいえ、それは一部のキャラに限ってしまうのですが。 たとえば、その「ONE」で言うなら川名みさき・上月澪は 言動と見た目だけで主人公が相手と恋に落ちている節が感じられ、 椎名繭は「恋を育てる」と言うより「人を育てる」気分を味わえました。 では、そうでないキャラをあげて言うのならどうか。 たとえば、長森瑞佳。 幼馴染み=最初から主人公を好き という図式がギャルゲーには非常に多いです。 でも、実際はと言うと、 顔をつきあわせた回数が好意を持つ原因にはなりません。 原因になるなら、男は全員母親と恋愛関係になります、 マザコンどころじゃなく。 幼馴染み=好き だったら、幼馴染みを持った男の人はみんな彼女持ちになれるでしょう。 でも、現実はそうじゃない。 顔を合わせて、お互い関わり合って、色々日々を過ごす中で 恋が芽生えたり育ったりする物でしょう。 それをしっかり描いている。 また、たとえば七瀬留美。 美少女の転校生との運命的な出会い。 でも、それは文字通り衝突の連続。 都合のいい女の子ではない少女が、 自分に対して良い感情を抱いていない少女が、 やりとりと波乱の中で、今まで好きでも何でもなかった相手に恋をする。 「ああ、このキャラは主人公のことが好きなんだな」 と納得できました。 最初から相手を好きなばかりが恋愛じゃないでしょ? 「好かれていなかったら、もう恋愛にならない」 そんな事はないんですよね。 そして、里村茜。 言動が特徴的で、過去に重いトラウマを持つが故に、 その部分ばかりが注目されてしまいがちですが、 本当に見るべき所はもっと別なところではないかと思いました。 恋はいつでも叶うとは限らず、 叶わないからと言って恋心が終わるわけでもない。 そして、叶わない恋をしながら他の人を好きになることは、 別に悪いことではなくごく自然な事です。 これらのヒロインは、現実での感情を上手く取り入れてあり、 それがまた魅力にもなっています。 また、お二方のシナリオをわけて考えてみるなら、 麻枝准氏は安定した文章力の上で、 しっかりと恋愛の過程を描いていく。 その地に足のついたシナリオはプレイする人に安心感を与えます。 久弥直樹氏ははっきりと「伏線」だと判る伏線をはりながら 最後に伏線を一つの結末へと昇華させ、 待ち望んでいた蕾が開くときのような爽快感を見る人に与えます。 「ONE」はこのお二方のそれぞれの持ち味が ちょうど良いバランスで発揮されたと感じました。 が、他の作品はと言うと…。 「Moon」は、恋愛要素が非常に少なく、また設定が特殊なので そういう片鱗は見えてもあまり強く無かったと感じました。 「Kanon」はというと……。 お二方の持ち味がほとんど発揮されていなかったとしか言えません。 伏線をはり、それをいかせたのは、 あゆシナリオだけでした。 キャラも言動は面白くかわいらしいのですが 「気が付けば自分は相手のことが好きになっていて 相手も自分を好きでいる」 状態になっていて、女の子がどんなキャラなのかを描くばかりに 終始していた感が残りました。 「AIR」は久弥氏は参加されなかったのですが、 やはり登場するヒロインを描くだけになっていたように感じました。 その事実を残念に思います。 お二方それぞれの良い部分が、いっこうに発揮しきれない。 お二方が一緒に仕事をするしないにかかわらず、 もし、それぞれの持ち味を最大限に生かす事が出来たなら…。 私はそのときが来ることを考えるだけで、 胸が躍ります。 「そのとき」が来てくれることを、 切に切に願っています。 |