ゲームタイトル | メーカー | ジャンル |
天使のいない12月 | Leaf | ノベル |
パッチの要不要 | 攻略の要不要 | 一言感想 |
要りません | 無くて大丈夫 | アンチ「純愛ゲー」 |
当サイトのレビューは、これからプレイを考えていると人のために ネタバレは基本的に書かないようにしているのですが、 今回はネタバレを含みます。 むしろ、ネタバレしてでも先に言っておかないと プレイした人が後悔しかねないことがあります。 では、行きます。 ネタバレになりますが、書いておきます。 このゲームには、両想いになれて良かったねと納得できるEDがありません。 両想いになってもそれを恋愛だとは主人公が納得してくれません。 そして、非常に多くの罵詈雑言がゲーム中に飛び交います。 主人公やヒロインの発言を含めて、 「死ね・自殺しろ・セックス」等の単語が このゲーム中では連呼されます。 そして、各シナリオとも「その後こうなった、こうしていこうと思った」等のオチはありません。 大団円はありえません。 キャラ萌え要素も殆どありません。 ポイントは、だからといって鬼畜ゲーではないところです。 暴言に耐性のある人、 既存の純愛ゲーに「学生が愛だのなんだのいえっこないよ」と突っ込みを入れてしまう人、 ヒロイン全部が精神異常者だったとしても平気だと言う人には向いていると言えますが それ以外の方は注意が必要かと思います。 メインスタッフが殆どTo Heart2の開発メンバーなので 「この人達がToHeart2を作りますよ」という お披露目作品にも見えます。 絵 なかむらたけしさんとみつみ美里さんが原画。 女の子は誰も可愛くデッサンも安心してみられます。 塗りは淡めで色づかいはやや暗い感じです。 全体的に退廃的なイメージが漂いゲームの雰囲気をより濃くしてくれています。 塗りが淡いため、なかむらさん独特の 「現実にはあり得ないけど絵が華やかになる髪の流れ具合」をした立ち絵・Hシーンは 少し非現実さが目立つかもしれません。 Hシーンは派手な構図の物もあり見応えはあるのですが 全体的にCG枚数が足りない感じがします。 背景CGはとても細やかで塗りも綺麗です。 音楽 スタッフロールで音楽担当に名前が出てくるのは 松岡純也さん/石川真也さん/下川直哉さん/中上和英さんの4名です。 あるキャラのシナリオ上ギターの曲もあり、 全体的に落ち着いた曲調の物ばかりになっています。 OP・EDは歌つきで、EDはAKKOさんが歌っています。 ヒロインや妹、友達などに声がついています。 ヒロインの声優さんは声が高めの人が多く響くので 早い時点から中盤、後半とHシーンは多いので音声付きでのプレイは 他人に聞かれないよう気をつけてください。 システム WinXP・DVDでのプレイですが致命的なバグなどは見受けられませんでした。 DVDだから画質がいい、音質がいい等があるわけではないようです。 主人公の名前は任意で入れることが出来ますが ファーストプレイでは自分の本名などを入れるのは思い止まった方がいいかも知れません。 システムまわりでは既読スキップが使い勝手が悪く、 一度スキップをはじめると設定でスキップを止めない限り 未読か選択肢になるまでスキップし続けます。 一応、過ぎた文章を見ることが出来るようにはなっているのですが 「さっき見たこの部分だけ確認したい」 という使い方をするのには不便です。 ゲームスタイルはノベルタイプで選択肢は非常に少なく、 プレイ時間も音声つけても1日でクリアできてしまう程度です。 スキップを多用して音声を飛ばせば、数時間でオールクリアできます。 キャラをクリアすると出てくるおまけモードのシーン回想にはEDスタッフロール込みが入ります。 全キャラクリア後に追加されるボーナスもあります。 シナリオ 女に興味のない主人公があることがきっかけで身体だけの関係を持ってしまう…。 というところからはじまるこのゲームは12月のある日からクリスマスまでのお話です。 ヒロインはいじめられっ子にその親友でクラス委員、 主人公の友人の彼女にバイト先のお姉さん、バイトの同期の5人で、 それぞれに後ろめたいことや秘密がありますが、 ヒロインと主人公が力を合わせてそれらを乗り越える… という展開にはなりません。 スタッフロール付きエンディングは、 必ず最後に雪のふる中で「それは永遠でなく 真実でなく ただ、そこにあるだけの想い…」の 3行の文章で締められるので、 ふる雪を見上げるシーンになったらエンディングだと思って良いです。 ヒロインは可愛らしいのですが精神異常者と 呼んでも良いほどの内面的問題を持っているキャラが多く 主人公もこれでもかと言わんばかりの後ろ向きな考え方なので 退廃的すぎて辛いかも知れません。 また、殴るぞ犯すぞバカ女等の罵りが激しすぎて ストーリーを進める以前に気力が萎えてしまう可能性も高いです。 1キャラのシナリオ毎のボリュームはそれほど無いですが、 ヒロインのキャラを立てるために日常シーンをだらだら書く、ということがないからかも。 主人公含めて各キャラクターの思考に特質さは感じますが 文章的な問題は特に感じませんでした。 Hシーンは前戯とかを含めてあっさりしていて 服を着たままでしても学校でしても相手が悶えまくっていても 「メス犬、スケベ」とか言葉責めをしても 行為は凄いはずなのにあんまり濃厚さは感じられません。 シナリオライターは三宅章介さん、企画も担当です。 PS2で開発中のTo Heart2ではシナリオ担当者として最初に名前が出ている人です。 スタッフロールには一人しか名前が出ていませんが、 Hシーンで「オルガスムを向かえた」等の書き方をしていたりしていなかったりするので もしかしたら他に書いている人がいるのかも知れませんが詳しくは不明です。 全体を通して 「好き」という感情は、当人がそうだと思えばどんな形であったとしても それが「好き」になるものです。 このゲームはどのキャラとのエンディングでも 素直に主人公が事を受け入れて納得すれば良いだけなのに それをうじうじと「これは本当の感情じゃない、錯覚だ」的なことを考えるせいで 永遠に幸せの来ない話になってしまってます。 確かに「こんな程度で好きとか愛してるとかいっちゃって良いのかな?」とか リアルでも考えることはあると思いますが、 この主人公は真剣に考えるのを通り越して後ろ向きになってます。 恋なんか錯覚から生まれる物なんだから受け入れてよー、とか 何度も何度も突っ込みを入れながらプレイしていました。 社会的地位も後ろ盾もない一学生の主人公が、ヒロインの抱える困難を力合わせて乗り越えたら 一生ものの絆が出来ていて愛してる愛されてるの関係になっていたり、 ヒロイン達との日常のやり取りがだらだら続いてから 「さぁ、このカタログで気に入った女の子とのシナリオへ進んでください」的なものが 現在「純愛ゲー」と呼ばれる物の傾向だと思います。 現実にあり得ない困難をもつヒロイン達、現実にあり得ない精神力旺盛な主人公、 主人公に都合の良すぎるヒロイン達、 それらに嘘くささを感じる人ならば、このゲームに納得がいくんじゃないかと思います。 ただ、リアルな一高校生男子というには 異常の域まで行ってる思考の特質さや「セックス」といった単語の異常なまでの連呼、 そしてヒロイン達の内面の異常さ加減が 純愛ゲームのそれとは別の非現実さを打ち立てています。 その辺りを考慮した結果、「アンチ『純愛ゲー』」と呼ぶのがしっくり来るかと思い 一言感想をそれにしました。 ご存じの通り、アンチとは「反対の」という意味です。 そしてたぶん、「そういうゲーム」にしようと作られたんじゃないかと思います。 クリスマス、遊園地でデート、雪降る中でのキスシーンと 純愛ゲームでは感動的に盛り上げてハッピーエンドにさせるシーンが盛りだくさんなのに そういった行為やシーンがあっても主人公は相手を好きだと思っていない場合もあったり。 また、このまま調教しちゃえば鬼畜ゲームになるだろう部分も多いのに 主人公は肉欲は求めても、身体を好き放題に弄んでも 鬼畜ゲームにならないあたりがまた、黄昏的です。 ダークではなく、もちろん白くもなく、だからといって灰色でもなく、 淀みと希望と悲しみとがたゆたう黄昏のイメージです、エンディングも。 こう書くと悪くなさげに見えるのですが、 致命的なのは内容がこのゲームの購入層に合うようには思えないところです。 自分の名前でプレイして、絵的に気に入った女の子に罵倒されたり罵倒したりする事に 抵抗を少しでも感じる人は、プレイに精神的苦痛を伴うでしょう。 ゲームでは、プレイヤーは主人公の立場に自分をなぞらえて 主人公のすること・されたことを自分のすること・されることと感じます。 このゲームがもし小説だったなら、 罵倒合戦による精神的苦痛もそれほど感じずに済むんだろうなと思います。 けして悪いというわけではありませんが良いともいいがたい、 純愛とは言えないけど鬼畜とも言いきれないすっきりしない不思議な作品です。 それでも、主人公は恋をしていて、これは恋愛ゲームではあるのでしょう。 |