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美少女戦隊
Kanonファイブ
美少女戦隊 Kanonファイブ 人物紹介
◆月宮あゆ(Kanonレッド)
Kanonファイブのリーダー。
必殺技「食い逃げダッシュ」は、メンバー全員の身を守るのに役立っているかもしれない。
◆水瀬名雪(Kanonブルー)
Kanonファイブのムードメーカー。
自慢の足を活かした必殺技「引き回しクラッシュ」は、まさしく必殺! 逃れた者は今まで一人もいない。
◆沢渡真琴(Kanonイエロー)
Kanonファイブ一の暇人。
すべての食べ物に対する執念から起こる必殺技「嫌がらせパンチ」は、威力はないが受ける方の精神的ダメージが大きい技だ。
◆美坂栞(Kanonホワイト)
Kanonファイブ一番のくせ者。
純真な心に宿るイメージを実体化させる必殺技「スノーマンブリザード」は北の町ならではだ。
◆舞(Kanonブラック)
Kanonファイブ唯一の実力派。
剣術を極めたからこそ出せる必殺技「糸断崩花」の名は、納豆の粘ついた糸さえ両断するところからついたもの。
平和な街角、平和な日常。
それを満喫できるのが当然と思われる昨今。
だがしかし、とある北の町では、その平和はある少数の人の手によって人知れず守られていたのだ。
その平和を守る正義の使者の名は、Kanonファイブ!
それが、人類の守護者の名前。
この物語は、か弱い少女の身でありながら世界…いや、小さな北の町の飲食店の平和を守ろうとする少女達の物語である。
「キャーーーッ!」
ここでは日常が、平和が、乱されていた。
街角の小さな牛丼チェーン店、昼飯時まで後少しと言うこの忙しくなる時間帯に、悲劇は訪れた。
「なんだあれは!」
「化け物よ!!」
店員、客共々店から逃げ出しながら振り返る。
そこには身の丈2メートル、そして両手にカニかエビのハサミのようなものをつけた、人でないものが店内の食料品をあさっていた。
「ここにある食い物は、全部いただくロブ」
「あ、ロブスター怪人だ」
「うん、あの語尾はロブスター怪人だね」
野次馬が小声で囁く中、その怪人はロブロブ言いながら厨房をあさり始めた。
もちろんコックは全員退避した後で、厨房には作りかけ、準備中の牛丼やみそ汁が山となって置き去られていた。
「ああ〜、このままじゃ食材が全部食いつぶされる〜。やっと開店できた店が、脱サラしてローン組んで建てた店がつぶれる〜」
がっくりと膝をついて店長らしき中年の男が、店から離れたところで、逃げまどう客に押されながらも店へ這い戻ろうとしていた。
「会社ではリストラ、だったらと思って勉強会に参加してやっとオーナーになったと思った店は怪人に荒らされ、いったいこれからどうすりゃいいんだっ!」
「お任せ下さい!」
涙でにじむ目をこすり、店長が見上げると、近所の屋根の上に5つの影が。
「Kanonレッド!」
中央の影がポーズを取る。
「Kanonホワイトです」
きびきびとした感じでその隣のもポーズを取る。
「Kanonイエロー」
「Kanonブルーだよ」
「…Kanonブラック」
5人それぞれに名乗りを上げ、ポーズを取っていく。
もうすでにあたりに人はなく、その5人と店長しかいない。
「あ、あんた達は…?」
「人呼んでKanonファイブ! おじさんのお店を荒らすか偉人をやっつけに来たんだよ」
店長は我が目を疑った。
どこから見ても小さい格好の、しかも服もどこかの制服を改造しただけって言う感じなのに、こんな初めて聞くような名前の少女集団に、店を任せていいんだろうか?
何より、この少女達は何者だろう? 遊びにしてはタイミングが良すぎる。
「じゃあ、お嬢ちゃん達が怪人をやっつけてくれるのか? そんな小さい体で?」
「うぐぅ、小さいは余計だよぅ。もちろん倒すために来たんだよ」
「じゃあ、頼んでもいいのか? ワシの店を」
Kanonレッドが小さい胸をたたいた。
「任せてよ、おじさん! 飲食店の平和は、ボク達が守るよ!」
「おお、頼んだぞ、Kanonファイブ!」
5つの影は、頷くと屋根の上を走って店の方へと向かった。
頼りない後ろ姿を見ながら店長は、自分の店に被害がこれ以上大きくならないことを祈る以外、何も出来なかった。
「うぐぅ、キミが怪人だね! ボク達Kanonファイブが来た以上は観念して貰うよっ!」
レッドの口上に、牛丼のつゆが入った鍋をおろして、ロブスター怪人は振り向いた。
「なんだ貴様らは? 俺様は腹が減っているんだ、邪魔をすると容赦しないぞ」
「おなかがすいてるのは、私だって同じだもん」
イエローはそう言うと、どこからか小袋を取り出した。
「イエロースパイス・ボム!」
投げつけた小袋は、ロブスター怪人のハサミに当たってはじけ、中身が空中に飛散した。
「なんだこれは? まさか、この鼻をくすぐる感触は…」
言葉が終わらないうちに、怪人はくしゃみを連発しだした。
「ナイスだよ、イエロー! ブルー、怪人を外に引っ張り出して!」
「わかったよ、レッドちゃん。必殺、引き回しクラッシュ!」
ブルーが、やはりどこから取り出したかわからないロープで怪人を引っかけると、そのまま引きずるようにして厨房から勝手口へと怪人を連れだした。
「ここでいいかな?」
「ありがとう、ブルー! ホワイトの出番だよっ、お願い!」
「わかりました、スノーマンブリザードっ!」
ロブスター怪人がようやく立ち上がろうとした矢先、その視界は真っ白く埋め尽くされた。
無数の雪だるま…正しく言うなら雪で作った玉…が、一斉に怪人に降り注いだのだ。
「うぎゃ、何でこんなものがこんなところに!」
「止めだよっ、今日一番力が強いのはブラックだねっ!」
「…牛丼、食べたい」
ブラックが渾身の気合いを乗せて、一撃を放つ。
抜き身の剣が、怪人へと迫る!
「…必殺、糸断崩花」
交差する怪人とブラック。
一瞬の間をおいて、崩れる怪人。
崩れ落ちる瞬間、怪人は大きな爆発を起こし、身体を四散させた。
「おおい、なんだ今の爆発は!?」
店長が勝手口から外をのぞくと、5人は決めポーズを取っていた。
「怪人退治はお任せ、Kanonファイブ!!」
その後。
昼時までに、少しの遅れはあったものの営業を再開できた牛丼屋の店長は、大喜びだった。
「おなか空かれたでしょう? 何なら好きなだけ食べていってください」
このときの店長の笑顔は、本当に晴れやかだった。
「じゃ、遠慮なくいただきます」
そう言ったKanonファイブのメンバーも、マスクからのぞく口元からだけでも満面の笑顔をたたえていることがわかった。
しかし…。
「ああ〜、もうお終いだ〜」
数時間後…。
満面の笑みをたたえたままのKanonファイブを前に、顔面蒼白の店長がいた。
24時間営業のはずの店には、臨時休業の張り紙が出された。
コックは全員やる気をなくしてかえってしまい、皿洗いもいなくなってしまった。
残されたのは、空に近づきつつある冷蔵庫のみ。
その冷蔵庫の中身さえ、後は卵が数個あるのみになっている。
「もう、もう帰って下さい〜」
店長のか細い魂の叫びをよそに、5人は同時にどんぶりを出した。
「おかわり!」
店長は、泣き崩れていった。
END