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水晶華(前節・氷中華)

作者・水橋真琴様アリエッタの喫茶室


 終業のチャイムも鳴り終わり、掃除が終わり、今はもう教室にはほとんど人が残っていない。
 誰かを待っているわけでもなく、私はただじっと目の前の机を見つめていた。
 
 考えたくないことを考えざるをえなくなってしまった今、どこかに寄り道する気も家に帰る気も失せていた。

「香里ー…」

 そこに、いつものおっとりした声が私の背後から聞こえてくる。
 その声自体は、もう何年も聞いている筈なのに、今日の私には無性に燗に障った。

「……何?」
「祐一見てない?」
「見てないわ」
「えー、でも、お昼休みに何か話してなかったっけ」

 嫌な思いが再び脳裏にフラッシュバックする。
 彼が私に訊いたこと、それは、私が一番訊かれたくない事だったから。
 
「……見てない」
「あぅ。困ったよー…」
「探してるの?」
「うーん、訊きたいことあったんだよ」
「勉強?」
「明日提出の宿題、まだ手つかず……」

 困ったように目線を下げる仕草。何もかもが、無性に嫌になっている自分には、そんな媚びたような仕草を、自然に出来る彼女が無性に腹立たしかった。
 彼女は親友だ。
 敵ではない。ずっと、ずっと付き合い続けてきた親友だ。
 私にはない、自然に人を惹きつけるような、作らずとも男子達の気持ちを惹きつけるような、そういう何かを持った彼女と、私はずっと親友で居た。
 居るつもりだった。
 
「……うちにくる?」
「あぅ?」
「もう昨日のうちに終わらせちゃったもの。参考にするぐらいならいいわよ」
「うんっ」
「丸写しは禁止」
「ええー……」

 背を向けて歩き出すと、背中越しについてくる彼女を振り返る。

「ん?」
「…………」

 小首を傾げる姿。長くて、柔らかな黒い髪。白い肌。丸くて大きな目。
 短いスカートの裾から、ハイソックスまでの間にわずかに見える素足が真っ白で、雪に慣れたこの目にもまぶしく映る。
 何もかもが、私と違う。

「……なんでもない」

 私は、彼女を引き連れて歩いていく。
 もしかすると……もう、壊れていたのかも知れない。
 ……私の中の何かが。

 家には誰もいない事が解っている。
 普段なら、家族がみんな揃っているのだ。父も、母も、そして……たった一人の妹である、栞も。
 だが、誰の姿も家の中にはない。
 次の誕生日を迎える事は出来ない……そう言われた栞の、精密検査の日なのだ。
 だから、誰もこの家には居ない。
 
 ずっと目を逸らし続けてきた事だった。
 栞がもうすぐ、この世からその姿を消してしまうという事実を。
 それを、あの男はかき乱してくれた。押さえつけていた気持ちがまたまきあがるほどに。
 
「……お茶、淹れてくる」

 名雪を部屋に残し、私は台所で茶を淹れる。
 ふと、栞の使っていたカップが目に入る。
 まるで、自分を使えといわんばかりに。
 何故そこにそのカップがあるかを考えずに、私はそれを食器棚へと戻す。
 そして、自分と客用のカップに紅茶を淹れる。
 
「……なにしてるの」

 名雪が部屋の中をあちこち物色しているのを見て、思わず声が低くなる。

「うーん、香里ってあんまり部屋の中飾らないね」
「あんまり必要ないから」

 ベッドに腰掛けた名雪が、あたりを見回す。
 シンプルなシーツ。シンプルな布団。
 そして、シンプルな壁紙。
 そう。この部屋を飾り立てる理由など、私には無かったのだ。

「そうかな。飾ったら可愛いと思うよ。今度けろぴーの妹連れてきてあげるよ」
「………妹?」
「うん、けろぴー。妹がいるから、こんど連れてくるよ」

 またも、そのキーワード。
 悪意がないのは解っている。だが……それでも。

「……名雪」
「ん?」

 身体がゆっくりと彼女の方へと向かう。
 表情を殺しているつもりだったのに、彼女は私を見上げてこういったのだ。

「……え? ………香里……?」

 驚いた顔を向ける名雪。
 だが、何も困ることはない。驚くことはない。
 私は、壊れただけだ。そう思って、私は手をゆっくりと彼女の方へと向けていく。

「……じょ、冗談……?」

 ゆっくりと、近づいていく、私の手。
 名雪が、とっさに片手をあげてそれを遮ろうとする。
 その手首を強く掴むと、勢いよく私は彼女をベッドの上へと押し倒す。
 慌ててもう片方の手を使って私の手を払いのけようとする、その仕草は絶望的だった。
 私の手は狂気にまみれていた。
 
 左手が彼女の頬を撫でる。怯えたように戦慄いた名雪は、後じさって逃れようとする。その動きを、私は制していく。
 壁にすり寄ればすり寄るほど逃げ場がなくなっていく。
 陸上部に所属する彼女の筋肉はしなやかで、いつでも私を蹴り飛ばして逃れる事が出来ただろう。
 だが、それをしないで、怯えながら何度も何度も彼女は私の名を呼ぶ。

「……お願い、香里、何かの冗談だよ、ね、冗談……」
「……………冗談?」

 冷たく呟く。感情がこもらない声が、これほどまでに冷たくなるのだと、自分でも驚きそうになる。

「……冗談……じゃないわ」

 左手がゆっくりと、首筋を撫でていく。白いケープが掌に触れる。
 それをさらに押し下げていくと、ゆっくりと、柔らかなふくらみへと向かっていく。
 流石にその辺りを弄られるのは怖いのだろう。
 ついに眦から涙をこぼして、名雪は涙声で私の名を叫ぶ。

「香里……怒るよ……」

 だが、手は止まらない。右手にかかる力が急に強くなり、その手を何度も何度も名雪の右手が叩く。
 右手の痛みが徐々に強くなってくる。
 とうとう、私はその手を掴むと名雪の顔を至近からにらみ付けた。

「…………っ!」
「…………」
 
 数瞬、彼女の顔が硬直する。
 これほどにキツイ私の表情を見たことがなかったからだろうか。
 仔猫が叩かれたときのような、怯えた目で私を見上げながら、名雪は私の右手を叩くのを止めた。

「……っ!」

 今やベッドの上で彼女の身体に馬乗りになった私が、彼女の両手をひとまとめにして片手で押さえつけ、左手で彼女の胸元へと指を滑らせていく。
 制服の、すべすべしたナイロンの感触。
 その中に封じてある柔らかい果肉を、制服の感触越しに感じながら、私はゆっくりと左手に力を掛けていく。
 びくっ、びくっ、と手が逃れようとする。
 恐怖感と、嫌悪感があらわになった目で私を見る名雪は、さっきまでののんびりした表情を既にかけらも残していない。
 時折、大きく息を吐くのは痛みの所為なのか、それとも……。

 名雪の涙のこぼれる頬に顔を近づけると、舌先で涙の後を舐めあげていく。
 顔を一瞬震えさせたものの、もう逃げようとも抵抗しようともしない。
 腫れた頬を何度も何度も舌で舐めていく。

「………名雪」
「………………」
「……貴女に恨みはないわ」

 左手がゆっくりとケープのリボンを解いていく。
 するり、と薄いケープがはだけ、赤いリボンとえんじ色の制服のバランスが崩れる。
 だが、胸元に手がかかり、ボタンを外し始めると名雪が再びしゃくりあげ始める。

「……め………て………」
「…………………」
「め……てよ、やめて……よ………香里、香里………」

 手を一瞬止めた私が、名雪のあごを掴む。
 逃れようとする動きを制すると、私はその桜色の唇に顔を近づけていく。

「………っ!!」

 口を閉じようとした刹那、私の唇を彼女の唇へと食い込むように押しつける。
 顔を振って逃れようとするのを、手で押さえつけながら、私は彼女の唇を弄ぶ。
 舌先で舐めあげ、吸い上げ、前歯に挟み込んで口の中に吸い込み……。

「…………っ!!」

 一瞬手がはずれると、名雪は思いっきり顔を振って逃れる。
 見開いた目には嫌悪感がありありと浮かんでいた。
 そして、その顔を見たとき、私は………。
 
 ………私は………。
 
 微笑んでいた。
 
 左手が素早く動き、制服のボタンを外しにかかる。
 胸元までがあらわになると、抵抗する彼女をさらに強く押さえつけて、ブラジャーの下を掴んで引きずりあげる。
 するり、と現れた果実は、みずみずしい生気に彩られていた。怒りのためか羞恥のためか、白皙を桜色に染めている。
 先端をつまむと、とうとう名雪の口から嗚咽が漏れる。

「なんで……? なんでこんな事するの、香里……」

 その声も、私の狂気を止める術にはなりえなかった。
 泣きながら、逃れようとする動きは、しかし腰を全体重で押さえつけられている時点で無意味な行為だった。
 つまんだ乳首を、人差し指と親指にはさんでこねくり回し、反対の乳首には唇をあてがう。

「やめ……、あ……香里、……く……んっ、かお……りっ………だ……めだよ…っ」」

 言葉が途切れ途切れになる。
 乳首の周囲が固くなっていく。総毛立つ、とはこのことか。肌が粟立っているのが解る。
 それでも、乳房と乳首に加える刺激を止めはしない。
 
 乳房をこね上げる。全体を握りながら、中指と薬指の間に強く挟み込んだ乳首を刺激する。
 名雪の手の動きが徐々に緩慢になる。
 疲労の所為だろう。首を左右にふる仕草も徐々に力が抜けてきている。

「あ……………あ……か、かっ………香里……ダメだよ……」

 言葉と言葉の間が徐々に離れていく。
 もう、今や彼女の身体ははっきりそうと解るほど紅に染まっている。

「………覚悟して」

 そう言い放つと、私は今度はスカートの裾を通り越し、名雪の白い脚へと手を伸ばす。
 ハイソックスをずり降ろし、膝まで達するとそこで脚がまた緩慢に動く。
 向きを変え、名雪の下半身に身体を向けると、そのまま両手を使ってソックスを降ろしていく。黒いソックスの下から、白い素足が現れる。
 その、健康そのものの素足がたまらなく憎かった。

 ふと、背中に手を感じる。
 名雪が、両手を握りしめて私の背中にたたきつけているのだ。
 だが、その力はあまりにも弱い。

「……何のつもり」

 両脚をあらわにしたところで、私の我慢が限度に達した。

「…………覚悟決めた?」

 名雪の顔を間近に見る。目の焦点が合わない。
 覚悟を決めた、というより、混乱する気持ちの方が強いのだろう。

「……………」

 むろん、そんな彼女から返事はない。
 だが……今から私がする行為で、彼女が今の表情を保てるだろうか?
 
 両手をまた右手一本で押さえつけると、身体をずらし、左手をスカートの裾にかける。
 ゆっくりと、中に進入し、下着に手をかける。
 下着の中に手を入れると、五指を開いて陰毛をかすめ、熱を持ったその場所へと近づいていく。
 びく、と名雪の身体が跳ねた。

「…あ………あああっ!!」

 両手に入る力は今までより遥かに弱い。
 汗ばんだ掌が、暴れる右腕を押さえつけている。左手の指が、かすかに湿り気を帯びている秘裂へと到達すると、その動きはさらに大きくなる。

「ひ………ぃぃ………く……う……っく………香里……香里、香里………」

 親友の声が、耳元で嘆いている。
 彼女の泣き声を聞いたことを、そういえばなかったな、とふと思った。
 中指が、まだ濡れていない、閉じた秘裂へと食い込む。
 人差し指を曲げると、包皮をかぶった秘芯を、包皮の上から撫でてみる。
 両脚がびく、びくっ、と何度か激しく動き、私の手を挟み込もうと太股が締め付けてくる。
 だが、さっきひねりあげられた恐怖心がまだ残っているのだろう。あの力で秘裂を、秘芯を捻りあげられたら……そういう気持ちがあるのか、強く抑えるとその力がびくっ、と一瞬の間をおいて緩む。
 彼女の、親友の身体を完全に意志とは無関係に制圧している、という感覚が、私の背中をぞくぞくと駆け上がっていく。
 いつものほほんとして、のんびりした彼女は、今や手の中で私の左手の指一本の動きに怯え、時折伺うように私の目を見上げる。

「………名雪、どうしたの。抵抗しないの」
「…………香里………」

 右手を離すと、手首が青黒く変色している。
 その右手で、乳房に触れると名雪の口から小さな声が漏れた。

「……あっ………」

 感じているのだろうか。
 左手の人差し指を少し動かし、秘芯を撫でる。
 さっきより少し固くなっているのが解る。
 右手の掌に乳首を押し当て、指で乳房を揉みしだくと、掌に当たる乳首もまた、はっきりと固くなっているのが解る。

「……名雪……」
「……ん………んんっ……」

 頬を桜色に染め、手の中でさっきとは違う風に身体をよじる名雪。
 いとおしさを感じた私が、スカートの中の人差し指をゆっくりと、ことさらゆっくりと左右に、上下に動かし始める。

「……んんんっ………は……ん………あ………あああ……」

 徐々に声が大きくなってくる。
 もう、家には誰もいないから、遠慮することはない。
 そして、私は親友の口からもっともっと声を聞きたいという衝動に駆られ、彼女の声が示すままに右手と左手を動かした。

「はぁぁっ……い、いい………あああんっ………んんんっ………くああ……ん……」
「名雪、名雪………良いところ言いなさいよ、どこが良いのよ、ねぇ、言いなさいよ……っ」
「いいいっ………あはああっ……もっと強くして、強くして………」
「こう? こうなの?」
「あああっ………」

 秘芯が硬くしこり、乳房は握られた強さで赤い痣が出来ていく。
 もっともっと、何度も何度も私は秘芯をこすりあげていく。
 包皮を向いて、あらわになった秘芯をこすると、体中を痙攣させて名雪が鳴いた。

「あああああああ……」

 手足が突っ張り、私の身体は一時ならずはねとばされそうになる。
 それほどの強い刺激を、私は彼女にたっぷり10分は与えていただろう。
 
 指の動きを止めると、突っ張っていた手足から一気に力が抜ける。

「名雪………」

 右手であごを掴み、私の方を見させる。
 ……驚いた。
 
 彼女の眼差しは、本当にうつろだった。
 何も、そう、目の前の私すら見ていない。涙がかれて、その頬はしめっていたものの、瞳の中にはなんら感情が浮かんでいない。
 両手は投げ出された人形のように、身体の側面に放り出されている。胸を隠す仕草もせず、ぴんと立った乳首をあらわに、白い肌はピンク色に染まっている。
 中指を、ゆっくりと秘裂にあてがう。
 そして、また驚いた。
 乾いた砂漠のように、そこは濡れてはいなかった。
 ただ、無理やり感じさせられた証左に、花弁が開き、時折指を舐めるようにぴくぴくと動いていた。

「……感じてないのね」
「…………」
「……当然よね。こんな無理やり……それも、二年来の親友に散らされたんだもの」

 スカートをめくりあげると、顔を秘裂に近づけていく。
 息を吸うと、名雪がかすかに反応する。
 
「あ………」

 壊れたわけではない、と安心した。まだ彼女は私を拒んでいる。
 そのすれすれ、寸前まで、私は彼女を壊していきたい。

 顔を秘裂に近づけ、舌を差し出すと秘芯と秘裂を交互に舐めていく。
 今度こそ、彼女の身体が大きく反応した。

「んん! か、香里、ダメだよっ……やめて、そんなとこ、香里、汚いから……っ」

 両膝で、彼女の両腕を封じる。
 手足をばたつかせても、もう彼女は私に抵抗出来る訳がないのだ。

「今度こそ感じさせてあげるわ。………ギリギリまで」

 舌を秘裂に割り込ませると、内壁をなぞるように舐めあげていく。
 初めて、舌の上にかすかに違和感を感じた。ぬめるような液体が、急にあふれてきたのだ。

「……期待してる? もしかして」
「ダメだよ、香里、もう……そんな事……」
「いいえ、まだよ。貴女、私に散らされたいんでしょ? 初めてを」
「ああっ……」

 渾身の力で私をふりほどこうとする名雪を、私は難なく制していく。
 舌の動きを止めずに、秘芯と秘裂を交互に刺激しながら。
 充分に濡れたとは言えない。だが、確かに舌を受け入れる時、粘膜がぬめるのを感じた。

「………散らしてあげるから」

 手をベッドの下へと潜り込ませ、探る。
 一本の、細い瓶。乳液を満たしてあった小瓶だ。
 中身はもう枯れて久しい。その先端の丸みを帯びた形が可愛くておいてあったもの。
 それなのに、まるでそれはこのときのためにあったのだとばかりに私の手に飛び込んできた。

 先端を、ウェットティッシュで拭いてやる。
 つるりとした表面に舌を這わせて少し濡らしてやる。
 背中越しに、名雪にその瓶を見せてやると、名雪の表情が硬くなる。

「……香里」

 固い声で名雪が話しかけてくる。

「……本当に、それで……?」

 私は頷いてやる。
 目を閉じた名雪が、かすかにため息を吐いた気がした。

「香里………どうしちゃったの?」
「……私はいつもの香里よ」
「そうかな……。なんか、怖いよ」
「……そう?」

 ゆっくりと、瓶を近づけていく。
 震える腰が、無意識に逃れようと身体を浮かす。
 体重をかけ直して、その動きを制すると、力任せに太股を割り開く。
 そのまま、中心……秘裂のすぐ前にあてがうと、とうとう名雪が泣き叫んだ。
 
「………香里……」

 その声を聞いて、心に痛みを覚えながら、私は瓶をゆっくりと沈めていく。
 まだ濡れきっていない、乾いたとも言える秘裂へと埋めていく。
 肉を巻き込んで、ゆっくりと押し入っていく感触。
 少し引いて、今度はローションをたっぷりとまぶしてやる。

「ひ………」

 さらに強く押し進めると、何かに当たる感触がある。
 そう。
 これを引き裂いてやれば、名雪は壊れるだろう。
 好きな人でも、否、人ですらないモノに、純潔を引き裂かれるのだ。

「……名雪………」
「………香里。……痛いよ……」

 その言葉を聞いて、漸く私は安堵した。
 まだだ。ゆっくりと、ゆっくりと力を入れていく。
 
「ああ………っ、痛いよ……すごく、痛いよ……」

 名雪の声が響く。
 瓶越しに、私の手にはぷちぷちと肉がはぜる感触が伝わってくる。
 身体を引き裂くような痛み。
 彼女が感じている、あの痛みを、私もまた味わっている。
 それが恍惚だった。
 
「…………名雪」

 呟いた声は彼女に届いているだろうか。
 最後に、思いっきり力を入れると、名雪の処女の最後の証を、一気に奪い去る。

「…………あ……っ!」

 大きく、私をはじきとばさんばかりに、彼女の身体が大きく大きく跳ねる。
 私の手から瓶がはじけ飛び、床に落ちて重い音を立てる。
 手足が、手負いの獣のように力無く私を掴み、押しのけようとして、ゆっくりとベッドの上に落ちる。
 見開いた目からはもう涙も流れていない。
 開かれた口からは、かすかに嗚咽が漏れてくるだけ。
 
 瞳には私が映っていない。
 そう。もう、彼女の目には私の姿なぞ映っては居ない。
 
「………名雪………」

 今度は手で、秘芯をこすりあげる。
 逃れようとする動きはもう、瀕死の昆虫のようなものだった。
 何をしても私を妨げることは出来ない。
 今度こそ、彼女を絶頂させよう。何度も、何度も。
 気が遠くなり、意識を失っても。それでも私は許さなかった。
 あふれた紅の血がベッドのシーツを汚す。
 掌は、狂気と同じ色にまみれていた。透明な愛液と、紅の破瓜の血に。
 
 こすりあげるたびに、身体が跳ねる。その動きが緩慢になってきた頃に、さらに強くこすりあげ、破ったばかりの秘裂の奥を指でまさぐる。
 
 たっぷり1時間以上、彼女の身体を弄んだ私は、いつしか安堵感に満ちて目を閉じていた。
 そう。
 指を動かせばまだ彼女はのたうつ。
 
 人形。
 
 ……私は、目を閉じた。
 起きたときの後悔を思いながら。
 
 目覚めたとき、その時にこそ悪夢が始まるんだと解っているから。