【Top】 【Home】

助けてあげようプリズナー
誘ってくれたみやこうさんの案内で、初心者だけの街・ヘイブンから
世界一人の多い街・ブリティンへと移動し、必要アイテムを買ったり、
必要スキルをNPCからお金を払って教えて貰ったり、
訓練所で戦闘の練習をしたりと街の「外」へ出る準備を済ませ終わる頃、
私は市販されているガイドブックを買ってきて読みふけっていた。

ガイドブックの中で特に興味を持った項目は「ベンダービジネス」と「家」、
そして「エスコートクエスト」だった。
ベンダービジネスには家が必要、家にはお金が必要。
だが。
エスコートクエストだけは何も要らない。

街の中に居る「どこそこの街へ連れて行ってくれ」と(英語で)話しているNPCに
「私についでおいで」と(英語で)声をかければ勝手についてきて、
目的地へ着くと少々の名声とそれなりのお金をくれるという。

名声とカルマという二つの数値によって、自分の名前に「称号」がつく。
その称号を高くするのも自己満足を得るには良い方法だが、
それ以上に手に入るお金は非常に魅力的だった。
ありとあらゆる事にお金は必要で、食べ物・着る物・武器装備・
回復アイテムに魔法の本、これら総てお金で買う物だ。
荷物を運ぶ荷馬、早く動けるようになる馬、
これらも専用スキルがないキャラにとってはお金で買うものだ。

お金が簡単に手に入るチャンス、それがエスコートクエスト。

さらに、その変形のような物で「プリズナークエスト」なる物が存在する。
森や平地など、街の外を歩いていると突然複数のモンスター(敵)が現れ、
そこには宝箱と囚われの身のNPCが出現するという代物だ。
囚われの身を救えば、そのNPCは勝手に「どこそこへ連れて行って」と言って
助けてくれたキャラの後をついて来るという
英語の出来ない人でもエスコートを引き受けられるというお手軽さ。
モンスターを倒して戦利品、プリズナーを助けて礼金、
これで宝箱のカギを開けられれば3重のお得!

私はこのプリズナークエストに出会うことを楽しみに、いよいよ外の世界へ出た。

チャンスはすぐに訪れた。
「この哀れな身をどうかお助けください!」
その声に駆け寄ると、複数のモンスターと宝箱、そして小綺麗な格好のNPC。
ヤングアカウントである私には、ヤング特権の一つ
「モンスターからターゲットされない」システムにより、難なくNPCに近寄ることが出来た。

「もっと近寄らないと鎖が見えません」
言われるままに近付くが、いっこうに鎖など見えてこない。
NPC「お助けください」
私「助け方を教えてください」
返答しないと判っているNPC相手に突っ込みを入れていると、通りがかった人が足を止めた。
「近付いて、NPCをダブルクリック。これでOKだよ」

ああ、未だにその時の御恩は忘れていません。
名前は忘れてしまいましたが。

お礼を言いつつ、NPCをダブルクリック。
「鎖が解けました」の言葉と同時に

襲いかかってくるNPC!

「助けて」という間もなく、必死に逃げる、逃げる!
ヤングは敵にターゲットされないと言っても、それはこっちが攻撃をしなかったときの話。
そのヤングを追いかけて襲ってくると言うことは、こちらが攻撃をした証でもある。

「どこをどう逃げたか判らない」という言葉通りに、森を木々を藪を抜け、
追いかけてくるNPCを振り切り、一息ついたところで一人きりの反省会を行った。

「何が悪かったんでしょーか」
「判りませーーん」


下手な学級会のような会話が私の頭脳の中で繰り広げられ、
同じ過ちを繰り返さないようにと、とりあえず現場へ戻ってみることにした。

恐る恐る、画面に先程追いかけてきたNPCの名前が見えないことを確かめながら、
キャンプがあっただろう場所へと戻ってみる。
と、その途中で、先程プリスナーの助け方を教えてくれた方がこちらへ駆け寄ってきた。

「言うの忘れていた事がありました」
「はい?」
「NPCを助けるときに戦闘モードのままでダブルクリックすると、
相手は攻撃されたと思って襲いかかってきますよ」

その言葉に自分のモードを確認する。
…キャンプ出現前、野生動物と戦うために戦闘モードをONにして、
どうやらそのままだったらしい。
思いっきり「戦闘モード」でした。(T_T)

そりゃ襲われるわなぁ。
「助けまーす」と言いながら鎖を切ろうとした剣が、
囚われ動けない自分の鼻先を掠めたって感じでしょうから、NPCにとっては。
そんな目にあったら、私だって追いかける。

こうして、初のプリズナークエストは失敗で終わったのであった。
はぁう〜〜〜〜。(T_T)