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いよいよこの日が来た。 攻撃さえしなければ、ドラゴンの巣くう洞窟を平然と歩き回れた時代。 間違って死んでも荷物を持ったまま 近場の街のヒーラー小屋まで自動で移動できた時代。 フェルッカに行っても人殺しにあわない時代。 そんなyoungアカウントの時代が終わる日が来た。 youngアカウントが切れる前に、トランメル大陸ぜん踏破を目指そう! …そう思い立ったのはヤングが切れるまであと数時間という時期だった。 譲菜は順調に育ち、扇動を覚え、沈静も覚えた。 一般的な吟遊詩人戦士というキャラクターは、 扇動で敵同士を相打ちにさせ、 そこを後ろから攻撃して労せず強敵を倒す、というのがプレイスタイルなのだが、 私の場合は 戦ったはいいが相手が強すぎた>沈静化>大人しくなった隙に逃げろ! だったので、沈静化をよく使っていた。 いろんなプレイスタイルを作ることが出来るのがUOの魅力なので これはこれでOKだと思うのだが、 やはりスキル上げにもお金ためにも効率は悪かった。 話を戻そう。 大陸前踏破を思い立ち、譲菜は一人で歩き回った。 が、乗物を持っていなかったので (ヤングは人から動物を譲って貰えない、買うと馬1匹800gp近くする) ちまちまと歩き出した。 ……歩くスピードはdexが関わる。 ステータスが高くなってもyoungアカウントが消えるので、 ヤングはあまり歩くのが速くない。 …なかなか進まないのに業を煮やし、 目的を大陸全街見物にランクダウンさせるまでにそう時間はかからなかった。 今でこそムーンゲートはトラメル・フェルッカ両方を行き来でき どこのムーンゲートに出るかを任意で選べるが、 当時はトラメルはトラメル、フェルッカはフェルッカのムーンゲートにしか出られず 時間によって入ったムーンゲートから出られる先が決まっていた。 このムーンゲート仕様変更のおかげで便利になったが、 同時にフェルッカに住むキャラも多くなり 一気に住宅の値段が跳ね上がることになったが、 それはまた別の話になる。 ムーンゲート利用を思い立ったはいいが、なかなか行きたい先に辿り着けない。 それでも何度もチャレンジしいくつかの街を見て歩くと、 それぞれに特徴があって面白い。 もっと! と願う私の心が、ヤング特有のある移動方法を思いつかせた。 ヤングだけが行くことのできる街、ヘイブン。 このヘイブンの真ん中にあるムーンゲートは 好きな都市に好きなように移動できるのだ。 ヘイブンへ移動するのに一番簡単なのは再ログインすること。 早速適当な宿屋でログアウト>再ログイン>ヘイブンからはじめる と選んでいき、目的通りヘイブンのムーンゲートをくぐった。 その後、悲劇は待っていた。 私が選んだ行き先は「ユー」、森と動物の多い地域だ。 木こりと動物調教師にはうってつけの街とも言われている。 たしかに、まわり一面木だらけ野生動物だらけ。 とてものどかだが店が見あたらない。(爆) まさしく田舎。(笑) ムーンゲートから街の中枢へと向かう道も曲がりくねっていて、 迷いながら散歩にしゃれ込んでいた。 ブリティン近郊ばかりを歩いていた私には、 そんな曲がりくねって人の通りがからない道も 新鮮で面白かったのだ。 だが。 それが致命的だった。 移動に手間取っているうちに、ヤングアカウントが切れてしまった。 見知らぬ場所で見知らぬ敵に遭遇する前にと、 ムーンゲートに向けてきびすを返した譲菜に………。 動物調教師に置き去りにされ、人間不信になった グリズリーベアが、その牙を剥いた。 「ええ? なんでコイツ襲ってくるの? 私は通りがかっただけでしょ?」 そんな混乱を余所にガスガス譲菜のHPが削れていく。 一方熊の中でも上位の強さを誇るグリズリーベアには、 ヤングが取れたばかりの譲菜の攻撃など全然効いていない。 走って逃げようとするが徒歩のためスタミナも減っていく。 元から足が遅いため、距離を稼がないうちにスタミナ切れで動けなくなり、 追いついたグリズリーベアの攻撃に譲菜はあっという間に瀕死状態。 「助けて!」 こんな田舎町では通りがかる人もなく、叫ぶ声も木霊にならずに消えていく。 せめてブリティンならば、通りがかる人が助けてくれたかも知れない。 だが、そこはユー。 誰も通りがからない。 あえなく。 ヤングカウントが切れて数分で譲菜は昇天してしまいました。 しかも、道に迷ってヒーラー小屋がどこなのかも判りません。 (当時はUO関連HPも街の地図が載ったガイドブックも知らなかった) UO関連の知り合いはネットにいず、 勝ち誇った熊が去り、譲菜の死体が骨と化し風化して消えても 誰も通りがからず、 私はその場でログアウトすることを決めました。 ログアウト後、私はすぐさま新キャラを作りました。 完全な剣士キャラを。 譲菜を蘇生させるために、まずこの新キャラを育て 譲菜の散った場所から街までの安全ルートを確保させるために。 そして、グリズリーベアを蹴散らすために。 新キャラの名前は「譲菜から名を貰う」という意味で 「譲名」とつけた。 このキャラ「譲名」が、後「女帝」と呼ばれるのだが それはまだ先の話である。 |