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後日譚
「なぁ…、長森」
「な、何っ? 浩平」
 オレの声に慌てて振り返る長森が考えていたことはわからない。
 ただ、自分が長森に抱いている感情を、長森も持っているのか確かめたくなる。

 見つめていると明らかに頬が赤く染まる。恥ずかしいのか照れたような笑い顔を向けてくる。
「長森…」
 そんな仕草が、可愛いと思える。
「こ、浩平? なっなな、何かな?」
 顔を近づけると、一瞬離れようとするがすぐに元の位置へ戻ってくる。
 指先同士が触れると、一瞬大きくビクリと震える。

 そうっと顔を寄せる、長森は逃げない。
 吐息が鼻先を掠める程近付いても、長森は逃げない。
 向こうの目が閉じているのを見てから、こちらも瞳を閉じる。

 触れ合う温もりに安堵を覚える。
 頬をくすぐる長森の髪を払いもせずに、オレはその感触に浸った。


 かすかな余韻に浸りながら、長森から静かに離れる。
 すっかり暗くなった図書室に、ようやく灯りが点る。

「今年の春は花見にお前の料理もってこいよ。夏はプールに行くから、新しい水着を買うんだぞ」
「浩平が買い物に付き合ってくれるなら、そうするよ」
 机の下で、どちらからともなく手を繋いだ。
 ずっと、コイツと一緒にいたい…。

「さて、続きやるか」
「うんっ!」

 やがて来る季節を、二人で過ごすために。


END