before 〜名もない少女〜 |
白い雲間から射し込む光を受けて、柔らかな繊毛を煌めかせ一本の羽が舞い降りる。 永き時を経て、数多の人の願いを受けた羽が。 桜が舞うように、雪が舞うように、その羽毛は風を受け流され…。 一人の少女の手中に、さもそうなることが決まっていたかのように収まった。 肩までで切りそろえた髪は少し跳ね、あどけない表情が似合う、まだ幼い少女。その手の平に、小さな羽は休む。 安らぎを求めてか、想いを伝えにか。 手の中の羽を少女が眺めようと光にかざすと、一陣の悪戯な風がそれをまた大気の中へと舞上げた。 それを追って、少女は砂浜を駆けだす。 青に白い線を引く波打ち際を、これから始まる物語へ向かって。 「to AIR」 |