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プロローグ


 夕日に染まる校庭。人気のない校舎。
 放課後の学校は、独特な雰囲気を含んでいる。
 その一種特別な空間で、それは起こっていた。

「やめろよっ」
 その教室、一番後の机の上で、少年二人は重なっていた。
 黒髪の少年に覆い被さられ、それを押しのけようとする少年が声を上げると、黒髪の少年はより力をかけて相手をねじ伏せる。
「大きな声を出すと、人が来るぞ?」
「だったらやめろよ、相沢ッ」
 黒髪の少年は名前を呼ばれた一瞬、動きを止めた。が、すぐにまた相手の上に重なり、手首を掴みのけぞる首筋に唇を宛う。
「やめない。止められないんだよ…北川…好きなんだ、お前が」
「どうして? 俺は男だぞ、なんでこんな事っ…んんっ……っ!」
 北川と呼ばれた少年の言葉は、言い終わらないうちに、熱い口づけで遮られる。顔を背けようとする北川の顔の動きを追いかけて相沢の唇はより深い結合を求め、身体はそれに伴いますます北川を押し倒し、のしかかる。
 相沢の右手は北川の両手首を掴んで顔の上の位置に押し上げ、相沢の左手は北川のシャツのボタンを外そうとしている。
 北川は足をばたつかせるが、いかんせん股の内側に相沢の身体は入り込んでいるため、相沢にはなんのダメージも与えず、隣の席にかするかどうかというところで音を立てているだけ。
「! やめろ、それだけはっ…んんっ!!」
 一際強く北川が抵抗する。相沢の手がズボンのボタンをも外し、北川の『男性である場所』へと進入したのだ。
「北川……」
 相沢の唇が、北川の胸元を滑る。
 そして……。

 夕刻の鐘が校舎に響く。
 一人の少年の、獣じみた叫びをかき消すように。